「製品一つ一つに対して新しい物を作る心持ちで取り組んでいます」工場長石川に聞く 制作への思い
製品の制作現場を取り仕切る工場長は、どの様な製品が出来上がるかを左右する重要な役職の内の一つと言えます。そこで、みらい装備工房の制作現場をお伝えする企画のまず第一回は、工場長であり職人でもある石川に、製品に対する思いや製品を製造するときに気を付けていることなどを聞きました。
ー石川さんが、現在の仕事をすることになったのは10年前だと伺いました。転機になったきっかけは何だったのですか。
10年前までは、自営業でミシンを修理する仕事をしていました。その仕事の一環で、当時からミシンを今の会社(「みらい工房」)に納めていた繋がりで、ご縁をいただいていました。
ミシン修理をしながら、趣味の革製品の縫製をしていた所、その技術を買って下さった現取締役の早瀬さんにお声かけ頂いて「みらい工房」で働くことになりました。それからずっと、お客様の体に合わせた車いす作っています。
お客様にずっと使っていただける特別な物を作っていきたい
ー革製品と車いすは全く違うものに見えますが、戸惑いがあったり、苦労されたことも多かったのではないですか。
お客様の体に合わせて車いすを作るということでは、初めの頃は難しさを感じていました。100人のお客様がいれば100通りの車いすを作るので、お客様の特徴にあった車いすを作るための技術の修得には、努力が不必要なわけではありませんでした。
しかし、前から趣味にしていた革製品の作成では、自分の作った物を必要としてくれる人が、本当に欲しい物を作ることに喜びを感じていたので、苦痛ではありませんでした。むしろ万人にそこそこあう製品を作る時より、個別対応の製品を作る時の方が楽しさを感じます。新しい物を創り出していく喜びですね。
それは、「みらい装備工房」での製品作りでも感じています。こらからより多くのお客様と接し、お客様にずっと使っていただけるような特別になれる物を作っていきたいですね。使いやすい製品や個別対応の製品は、常に新しいものを創っていくことと同じなので。
一つ一つの製品作りに対して新しい物を創る気持ち
ー製品制作の錬磨無限ですね。しかし、工場長という役職柄、製造の管理などをしているとご苦労も多いのではないですか。
新しい物を創ることは得意なのですが、同じ物をずっと作り続けることは不得手であると自覚しています。同じ物を作り続けると効率的な作業で生産性を高めようとしてしまいます。ただそれだけならいいのですが、ルーティンに流されるとミスを犯しがちになります。工場長という役職上、製品の品質に責任があるので、ミスを犯さないよう、一つ一つの製品作りに対して新しい物を創る気持ちで臨むように自分に言い聞かせると同時に、現場スタッフがミスを犯さないような仕組み作りに取り組んでいます。もちろん検品にも余念はありません。
ナイロン糸を使う前に下準備をしています
ーポリエステル糸ではなくナイロン糸を縫製に使うと、縫うことが難しくなると伺いますが、製品を数々作りながら品質を維持していくのは大変ではないですか。
ポリエステル糸とナイロン糸は、科学的な数字上は実はものすごく大きな変わりは無いんですよ。それでも火が消えやすいという自己消火などは不思議ですよね。制作現場では、ナイロン糸を使いだしてからハサミの刃が一週間でボロボロになるようになり、こまめに研がなくてはいけなくなりました。ポリエステル糸を使っていた頃は無かったことです。ナイロン糸は革製品を作る時に使用するシニュー糸と同じで切れないという印象です。
話がポリエステル糸とナイロン糸の違いの話に少し反れてしまいましたが、ナイロン糸で縫製するときに気を付けていることは、ナイロン糸は締まりが悪いということです。締まりが悪いとは、製品を縫っていると糸を紡績した時の撚りが後まで撚っていき、ほつれの様になってしまうことです。ほつれになるとそこから耐久性が落ちたり、見栄えが悪かったりするので製品にはなりません。そのため、ナイロン糸を液体シリコンに浸けてから乾燥させて使用するというひと手間をかけるようにしています。
お客様の体の一部になるような製品作っていきたい
ー最後に製品作りに対する思いを一言お聞かせ下さい。
個別対応の車いす制作現場では、お客様に合った一つだけの物を作ることで喜んでいただけることが嬉しいです。タクティカルギアの制作現場でも、同じことを感じる機会がありました。東京・秋葉原にあるファントムAKIBAラジ館店様で、当日ご来店されたお客様のスマートフォンに合わせてケースを、その場でお作りするというイベントを先行的にさせていただいたことがありました。その場で、お客様のスマートフォンのサイズに合わせるのはもちろんですが、その場でお客様とコミュニケーションを取りながら製品に持たせる機能を作っていく過程が良い経験になりました。お客様から多くのフィードバックをいただきながら、オーダー品・既製品ともにお客様の体の一部になるような製品作りを続け、機能、品質でオンリーワンかつナンバーワンになる製品作りを目指したいです。